「認知症」を認識した銀行の対応は?
銀行は、口座名義人である本人が、何らかの形で認知症であると認識した場合には、口座を凍結させます。
理由は単純で、詐欺などの犯罪や口座の不正使用を防止するためです。
一般的に考えれば当然の対応だと思うでしょう。
でももしも家族の誰かが認知症になって、あなたが介護を行なっていた場合どうでしょう。
「今までは介護に関わる費用は何とか工面できてたが、苦しくなってきた。」いざ、本人の口座からお金を引き出そうとしても口座が凍結しているためお金を引き出すことができません。これから先ずっとあなたのお財布から介護を続けられるでしょうか。そんな場合に備えて、どのような状況に陥るのか。またどのような対策があるのか、少しご紹介します。
口座凍結によるいいこと
最大のメリットは、冒頭で説明した通り、詐欺などの犯罪や口座の不正使用を防止することができるということです。そのほかには、将来の相続による複数の相続人の分割協議時のトラブルを未然に防ぐことができます。
★★★口座凍結による不便
口座の凍結とは、口座が完全に利用できない状態のことを言います。入出金、振り込みや引き落とし、通帳の記帳、残高照会など、全ての取引ができません。尚、同銀行内に複数の口座を所有していた場合も全てが利用できません。
でも家族だったら大丈夫!?
家族関係を証明できる書類を準備したから引き出せる!?
いいえ。口座を代理で取引することは絶対にできません。預金とは口座名義人本人の財産です。つまり家族であってもその財産を守ることが銀行の使命なのです。
家族のためならお金のことは気にしないと考えてしまいがちですが、長い間サポートをしていれば状況は変化していくものです。現実的な問題としてやはり「お金」は重要です。今後起こる遺産分割協議で、「寄与分」としてこれまで工面してきた介護費用を考慮してもらおうとしても、場合によっては同居していることで、相当の利益を受けたのではないかと捉えられて、金銭的な配慮は受け入れられない場合もあります。
凍結された場合の対応策:成年後見人を定めて引き出す方法が基本ルール
本人以外が預金を引き出すための方法として、成年後見人と呼ばれる代理人を指名することで引き出せるようになります。しかしながら後見人の指名には法的手続きが必要となり、認定までに3~4か月程度時間を要するため、緊急で入院費や治療費の支払いが必要な場合には、間に合わないことがほとんどです。
この成年後見人は、当人と関係が深く、利害関係が想定される人は任命することができないため、おそらく介護を行なっているご家族は、対象外となるでしょう。一般的には専門家(弁護士や司法書士)に依頼する必要があります。そのため、その専門家に報酬を支払う必要があり、さらに、当人が判断能力が回復されたと認められない限り、成年後見人を解除することができません。現状、認知症は不治の病であるため、残酷ながら本人が亡くなられるまで解除できないでしょう。つまり、口座を引き出すために費用が膨大にかかってしまいます。
結論、この成年後見人制度を利用するのは、悪手と言えます。
口座凍結の不憫さ見直しの動き
全国銀行協会は、成年後見人を据えることが原則ですが、今後の見直しとして下記のような条件を確認できれば、出金に応じると考えを改めています。
- 預金者本人と面談または診断書にて認知能力がないこと。
- 本人の医療費など、本人のために使用することが明らかであること。
このように、銀行側も対処法を検討してはいますが、迅速な対応は極めて困難です。適正な運用が行われるまでには、もう少し時間がかかりそうです。
まとめ
介護費用はできるだけ本人の財産で賄うのが最もよい選択と言えます。
本来、本人が支払うべき介護費用ですが、口座が凍結されてしまうと、支払いたくとも本人は支払えません。そのため、家族が肩代わりすることもありえます。その前に本人としっかり費用に関する話し合いをしておきましょう。
また、預金者本人が手続きをして“代理人キャッシュカード”を発行しておくこともオススメです。不測の事態になった際に、ご家族が預金をスムーズに引き出せます。元気なうちにこのような策をとっておくことが財産を守ることにもなりますので、検討されてはいかがでしょうか。