終活は、行動ではなく思考
ここ数年で、“終活”という言葉が世の中に浸透してきました。ただイメージとしては、老後や余生という関連言葉を総称しただけで、形骸化した概念のように思われているようです。そのためなんとなく終活はお年寄りが考えるものだと決めつけて知ろうとしない考えようとしない人がほとんどでしょう。
しかし終活は遠いようで、実は身近なものです。若くして病気になったり不慮の事故にあったりすることもあります。また、身近でそのような不幸事に巻き込まれる事を見聞きすることも残念ながらあるでしょう。若い世代が死について考えるきっかけは、そのような身近な人の死を経験したときがほとんどです。その「死について考える」ことこそ「終活」だと思います。
つまり世代に関わらず
「終活」に関わっているのです。
当人の死を受け入れる時間
大切な人が亡くなった際に悲嘆のプロセスとしてショック期→喪失期→とじこもり期→再生期という段階を踏んでいきます。ショック期から喪失期は亡くなってから1~2週間かかり、ショック期から再生期までは1年以上、長い人では5年以上かかる人もおられます。当然ながら個人差はあります。
ここで説明したいのは段階の話ではなく、当人の死から再生期までの時差です。
本腰を入れていざ遺産相続や遺品整理を行おうと思っても、しばらく時間が経っている間に、「これはどうしたらいいのだろう?」と悩むこともしばしばあると思います。この時にトラブルが発生しやすく、なかなか遺産相続や遺品整理が片付かないという事態に陥ってしまいます。
そうならないために、生前にご家族や関係者で話し合うことが重要ですが、終活の一環と呼ばれているものをここでは2つ紹介します。
終活の一環
エンディングノートを書く
当人が亡くなられた直後は、葬儀の慌ただしさもあってか気を張っている方が多く、葬儀が終わってふと、故人との時間を思い出すときがあります。普段から会話も多く関係も良好な間柄でも、些細な会話や思いのすべては覚えておけません。
人の記憶は月日が経つごとに薄れていき、都合のいいように解釈してしまうものです。遺された人同士で揉めないように、ノートに記しておくことが効果的でしょう。エンディングノートは、遺産相続や遺品整理ついてだけでなく、余生をどう過ごしたいかといったご自分の死生観を表現できる箇所もありますので、一人一冊は持ちたいものです。
人生会議と呼ばれる活動
もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組のことを「人生会議」といいます。
正式名はACP(アドバンス・ケア・プランニング)、そのACPの普及啓発に活用する目的で「人生会議」という愛称が付けられました。この愛称は平成30年11月に決まったため、毎年11月30日(いい看取り・看取られ)を「人生会議の日」とし、人生の最終段階における医療・ケアについて考える日とされています。
命に危険が迫ると70%が自己決定できない、希望を伝えられないというデータがあります。これは、闘病中の方だけではなく、今は健康に過ごされている方も考えておく必要があります。ご家族を始めとする自分の支えとなるひとと死生観の共有し、可能な限り実行することで、死を迎えるときに本人もご家族も「これでよかった」と納得できる最期にしましょう。
人生会議のポイントは、自分の信念は何か、最期まで大切にしたいことは何か(例えば、最後まで口から食べ物を食べたい)、誰からケアを受けたいか、どこで最期を過ごしたいかは必ず話し合っておくべきです。自分の軸をもっておくことが、治療や介護の方針を決定する一助になると言えるでしょう。
あなたの終活
厚生労働省の発表によると、命の危機が迫った状態になると、約70%の方が医療やケアなどを自分で決めたり望みを人に伝えたりすることができなくなることが分かっています。
ぜひこの機会にエンディングノートを書いてみたり、「人生会議」について調べてみたり、自分なりの終活を考えてみてはいかがでしょうか。